阿蘇の食卓

阿蘇から生まれる
大地のまかなひ

つるのこ芋 高森町

“つるのこ芋”を焼いていると、突然ぴゅうぴゅうと音を出す。高森町の人々は「芋が鳴く」という。そろそろ食べごろという合図だ。

南阿蘇エリア

外輪山と湧水の大地

つるのこ芋 高森町

高森田楽に欠かせない味

豆腐やこんにゃく、山女魚、季節の野菜などを串に刺し、各家庭秘伝の味噌を塗って囲炉裏の炭火で焼く高森田楽は、高森町の郷土料理。『高森田楽村』など、町内の食事処で年間を通して味わえる。その素材として欠かせないのが“つるのこ芋”だ。色見地区でしか育たない里芋の一種で、一説に、ひょろりとのびる鶴の首のような形から名付けられたと伝わる。色見地区でつるのこ芋を栽培する農家・山口次郎さんと昌美さんは、「小ぶりなサイズで、肉質 はきめ細やか。とろりとまろやかな食感と上品な味が特徴です」と言う。一帯の土は、阿蘇の火山灰土壌。米や麦の栽培に適さない痩せた土地だからこそ育つつるのこ芋は、貴重 な作物として地元の人々に大切にされてきた。しかし、収穫量が極端に少ないこと、一度栽培した畑は5年間使えないこと、生産者の高齢化などから、近年は存続が危ぶまれている。それでも山口さんたちがつるのこ芋を育て続けているのには理由がある。「皆で食べることが、100 年続いてきた地元の種を守り続ける ことになるから」だ。

11月に収穫した「つるのこ芋」

収穫は11月霜が2回降り、茎が倒れてしんなりした頃だ。畑の端に掘った溝の中に埋めて保存し、必要な分だけ掘り出す。

高森町に移住後、つるのこ芋の存在を知ったという山口次郎さん(左)昌美さん。地元の人に育てかたを学び、栽培を始めた。

高森町に移住してつるのこ芋を栽培する山口さん夫妻
塩や味噌を付けて食べる“きぬかづき”

皮ごとみすから10分ほど茹で、塩や味噌を付ける“きぬかづき”も定番。小ぶりサイズを素揚げして、にんにく醤油を絡めても美味。

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